もてぎ南はフルパイロンでもハイスピード!西野洋平VSユウのPN3対決は、ユウが辛勝!!

レポート ジムカーナ

2019年4月4日

栃木県のツインリンクもてぎ南コースで早くも2戦目を迎えた全日本ジムカーナ。今大会は予想外の天候と難解なコースに翻弄され、PN3ではユウが"1本勝負"で今シーズン初勝利を挙げた。

2019年JAF全日本ジムカーナ選手権第2戦「もてぎスーパースラローム2019」
開催日:2019年3月31日
開催地:ツインリンクもてぎ南コース(栃木県茂木町)
主催:SHAKEDOWN、(株)モビリティランド

 2年ぶりに全日本ジムカーナのカレンダーに復活したツインリンクもてぎ南コース。

 この大会は、平坦かつ広大な舗装の広場を舞台としたフルパイロン・ジムカーナだが、配置パイロンの間隔が広くて走行ラインを見極めにくく、かつ路面には高低差やうねりが散見されるため、一筋縄ではいかないジムカーナイベントとして知られている。

 今大会は日曜のワンデーイベントとして開催され、エントリーは111台が集結。週末の天候は曇りから晴れる予報となっており、土曜は曇り空ながらドライ路面で走行できた。

 気になる決勝コースは、合計25本のパイロンで構成されており、その内の2本は過去2大会でも話題となった名物の「巨大パイロン」が設置されている。コース図を眺めると「いかにも」なパイロンコースだが、いざ慣熟歩行すると「次のパイロン」が遥か向こうにあり、コース中央がカマボコ状に盛り上がっていて、逆サイドが見通しにくい。

 しかも、砂利や落ち葉が溜まりやすいコースの『端』を多く走る設定で、そこをハイスピードで通過させたり、精度の高いブレーキングが要るターンを置いたりと、ワナが仕掛けられていた。そのため、いつも以上に走行ラインのイメージ作りが重要となっていた。

 今年のPN3は、2年連続チャンピオンを獲得している86使いのユウ(BSエボ itzz NTL 86)が開幕戦の筑波1000では2位、昨年来タイトル争いを演じている西野洋平(BSカローラ栃木ALEX 86)は、開幕戦を制して今シーズンをリードする。

 土曜の練習会でも、西野がユウを約コンマ8秒引き離すタイムを残しており、好調・西野のモーメンタムは高く維持されている状態だ。

 決勝の朝はウェット路面。土曜の夜に降った強い雨の影響が残り、今にも降り出しそうな曇天で決勝がスタート。気温も上がらない真冬のような気候での戦いとなった。

 PN3の第1ヒートは、1分36秒台で推移したターゲットタイムを、磯野剛治(フォースロードスターRF)が1分33秒225に引き上げた。続く大坪伸貴(DLマンパイ・コサリックBRZ)や山口克之(DL・AZUR・トヨタ86)も、1分33秒台前半タイムを叩き出して暫定ベストを塗り替え、残るユウと西野の走りに注目が集まった。

 しかし、ユウは最後のセクションを逆周りするミスコース。最終走者の西野は冷静に走り切り、後続を何と約2秒も引き離す、1分31秒179の暫定ベストタイムをマークした。

 路面もドライ傾向へと変わって第1ヒートが終了。午後に向けた慣熟歩行が始まり、選手が歩き出した。しかし、そこでいきなり雨が降り出してしまう。しかも大粒の雨がバラバラと落ちてきたため、せっかく乾いたコースには大きな水溜りができてしまった。

 この雨は第2ヒートのスタート前には止んでくれたが、止んだと同時に、今度は強い日差しが照り付けて、路面の水分をどんどん蒸発させていった。このコロコロ変わる天候に、第2ヒートでの逆転はできるのかと一同に不安がよぎった。しかし、PN1の中盤ではベストタイム更新のアナウンスも流れ、十分に"2本目勝負"へ持ち込める状況となっていった。

 このコンディションの良化に、ひそかに安堵したのはユウだ。なにせ第1ヒートはノータイム。”残り1本”で、好調・西野を逆転しないといけなかったからだ。

 PN3の第2ヒートは、各車1秒から2秒程度のタイムが更新されており、仕切り直しの戦いとなっていた。そこで、第1ヒート4番手の磯野がいきなり1分30秒788という仰天のタイムで暫定トップに立った。後続の選手は1分31秒台がやっと。巧者・川北忠(オートバックス DL BRZ)ですら、1分31秒284に留まってしまう……。

 そこでスタートしたユウ。何と1分30秒007という未曾有のベストタイムをマークして一躍トップに躍り出た。続くは最終走者の西野。しかし、西野は1分30秒台には叩き込めたものの、ユウには僅かコンマ35秒届かず2番手に終わった。

 この結果、ユウが今季初優勝を飾り、西野とのライバル対決を一勝一敗に持ち込んだ。

「今日は2本目勝負だろうと思っていたので、1本目はタイヤをしっかり作り込んで、タイムを確認しながら帰って来るつもりでした。でも最後に、アレ?……って感じで(笑)。このミスコースは余計でしたね。おかげで、昼に降った雨にはヒヤッとしました。

 2本目はドライ路面ではなかったですけど、1本目に比べて路面温度が高かったので、かなりのグリップが得られました。ただ、今回の”要”であるコースの両脇が結構濡れていたので、難しかったですね。

 奥で2回通るハイスピードコーナーも前後のラインの見極めが難しくて大変なんですが、前半に置かれたターンも、路面が端に向かって傾斜していて、かなりコンパクトに立ち上がらないといけないんです。なので、そこが濡れているのは大変でした。

 このコースは予想外の挙動が出たり、路面の凹凸もあるので、クルマの作り込みも大事ですね。コース端のコンパクトなターンでは西野さんに差を付けられているので、これからもっとクルマを煮詰めていかないといけないなと感じてます」。

 第2ヒートの"1本勝負"で、PN部門の後輪駆動車最速タイムを叩き出したユウだったが、ライバル西野とのコンマ差のリザルトには納得がいかない様子。次世代を担うドライバーであるユウと西野。PN3で展開されるライバル対決は、今年も激戦になりそうだ。

PN3で同じ車種を駆り、同じタイヤブランドを装着するユウ(中)と西野洋平(左)。二人のライバル対決には今年も注目だ。うれしい初表彰台は、3位の磯野剛治(右)。
今年からPN1でNDロードスターを駆る2年連続SA3チャンプの小俣洋平。第1ヒートでは後続を約2.5秒引き離す巧者ぶりを披露。第2ヒートもベストタイムを刻んで完全勝利!
開幕戦に続いて山野直也(左)とダブルエントリーで挑んだ100勝王者・山野哲也(右)。2年末の124スパイダーデビュー戦の地であるもてぎ南で、リベンジの優勝を果たした。
「奥のセクションは全然走らせ方が分からんかった」と語るPN4茅野成樹(中)だったが、走りのスタイルとセッティングの変更で好走し、ライバル野島孝宏(左から3番目)を約コンマ1秒差で下した。3位は茅野と野島に迫るタイムを叩き出した大型新人・奥井優介(右から2番目)。WRX STIでダブルエントリーする二木達也(左から2番目)と射場亮輔(右)が4位と5位でダブル入賞を果たした。
「思うように走れた」と語るSA1近藤岳士(中)が2017年大会に続く連覇。シビックから乗り換えた合田尚司(右)が2位、小武拓矢(左)は3位で、CR-X勢が上位を独占。
もてぎ南名物の巨大パイロンに挑む高江淳。2ヒートとも大差を付けた高江が開幕2連勝。「金曜から決勝ゴール直後まで完璧なレース運びができました」と王者の風格を漂わせる。
こちらも「思い通りの走りができた」と愛車NSXを撫でるSA3西森顕。MR駆動のメリットを最大限に引き出すライン取りを披露して、2ヒートともベストタイムで開幕2連勝。
津川信次(左)を退け、昨年の第7戦以来のSA4優勝を飾ったのは菱井将文(中)だが、「2本目は失敗した」と悔しい表情。マシンに不安を抱えつつも、今季の形勢逆転を誓う。
開幕戦は車両トラブルで不出走となったSC王者・西原正樹。その後遺症は残るものの、好調・大橋渡に1秒以上の差を付けて圧勝。大会オーバーオールタイムの快勝となった。
スタート地点から4番ポストを結ぶ稜線に、カマボコ状の傾斜があるもてぎ南。加えて1~2番、4~5番ポスト周辺は、普段あまり走らないエリアなので、グリップ感が他とは大きく異なる。このような路面状態の変化を踏まえた、最速ラインの見極めが要求された。
AJGA全日本ジムカーナ選手会では、第2ヒート終了後にギャラリー同乗走行やちびっ子同乗パレードランを実施しているが、もてぎ南で行われたパレードランでは、大会のコースマーシャルも協力して、鈴鹿やもてぎのレースでは恒例のフラッグパフォーマンスで迎えてくれた。
レース界では以前から採用されている「審査委員会技術アドバイザー」制度が、今年からラリーやスピード競技の全日本選手権にも導入されることが、今大会の開会式で明らかにされた。当日会場に訪れたスピード競技を担当する田中尋真氏によれば、「スタートしたばかりなので、まだ現状把握という段階ですが、シリーズを通した車検の平準化や、技術的な課題が生じたときにお役に立てればと考えております。基本的には審査委員会や技術委員長との関わりなので、エントラントの方々と接触する機会は少ないと思いますが、色々と教えていただきながら、その中で助言が必要であれば、経験や知識を生かしてご協力させていただくという位置付けになります」とのことなので、今後の活動に期待したい。
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