攻めの姿勢で最終戦もてぎを席巻! 角田裕毅がFIA-F4初タイトル確定

レポート レース

2018年11月21日

2018 SUPER GT Round 8 MOTEGI GT GRAND FINAL
2018 FIA-F4 第13戦・第14戦

開催日:2018年11月9~11日
開催地:ツインリンクもてぎ(栃木県茂木町)
主催:(株)モビリティランド、M.O.S.C.、(株)GTアソシエイション

最終大会「ツインリンクもてぎ」まで持ち越した2018年FIA-F4シリーズのタイトル争い。第13戦を制した角田裕毅が第14戦で2位表彰台を獲得して自身初タイトルを確定させた。

 2015年にスタートしてJAF地方選手権として開催されているFIA-F4。スーパーGTシリーズのサポートレースとしてもおなじみで、2018年シリーズは栃木県のツインリンクもてぎで最終ラウンドとなる第13戦と第14戦を迎えた。

 今シーズンもタイトル争いは熾烈で、2017年JAF F4チャンピオンの角田裕毅(HFDP/SRS/コチラレーシング)がシリーズ序盤を席巻するも、後半では小高一斗(FTRSスカラシップF4)や名取鉄平(HFDP/SRS/コチラレーシング)、菅波東吾(OTG DL F110)らが勝利を重ねており、2018年のチャンピオン争いは、角田がシリーズ首位、2位に名取、3位に小高というオーダーで最終戦もてぎラウンドを迎えることになった。

 1秒以内に約10名がひしめく僅差となった第13戦と第14戦の予選では、ダブルポールを名取が獲得。勝利を重ねることでしかタイトル獲得のチャンスがない状況ということで、名取が逆転タイトル獲得に向けて好スタートを切った。

 対するポイントリーダーの角田は、第13戦が4番手、第14戦は2番手スタートとまずまず。第13戦では地元もてぎの小倉翔太(DENSOルボーセJSS F4)が2番手で初のフロントローを獲得。山形大学の大滝拓也(SRS/コチラレーシング)は第13戦、第14戦とも3番手を獲得し、大滝のチームメイトである、全日本カート選手権OK部門2017年チャンピオンにして2018年もシリーズ首位を走る佐藤蓮(SRS/コチラレーシング)も、第14戦では4番グリッドを獲得するなど、ホンダ勢が上位を占める展開となった。

 土曜の13時から行われた12周の第13戦決勝は、もてぎ本コースの走行経験がほとんどない名取が1コーナーを制してレースをリード。後続は2番手スタートの小倉、大滝の順だったが、早々に角田が大滝をパスして3番手に浮上。そのまま5コーナーで小倉をパスした角田が、オープニングラップで2番手に上がって名取の後を追った。

 名取は単独走行でマージンを築いたものの、「自分の技術が不足していた」と名取が語るように角田が徐々に接近。二人のバトルは8周目を過ぎて、角田がトップ名取のポジションを奪ってみせた。
 3番手争いも熾烈で、小倉と小高がテール・トゥ・ノーズの競り合いを展開。小倉のライン取りにしびれを切らした小高が、ファイナルラップの90度コーナーで小倉のインを奪って、最終コーナーを3番手で立ち上がってきた。

 この結果、角田が第13戦を制してタイトル確定に王手をかけ、2位名取は自力チャンピオン獲得の可能性は消えているが、僅かな望みを胸に第14戦に挑むこととなった。3位表彰台には小高が登壇したが、正式結果では30秒加算の罰則が課されて21位へドロップ。4位フィニッシュの小倉が繰り上がって、自身初の”3位表彰台”を表彰台の外で獲得した。

 日曜の朝に行われた12周の第14戦決勝は、ポールポジションの名取が優勝しても、前日の勝利でシリーズ首位を堅守した角田が8位以上ならタイトル確定という状況で迎えた。ところが、フォーメーションラップが終えた時点で小倉のマシンに駆動系トラブルが発生。赤旗でスタートディレイとなり、1周減算の11周レースに変更されることになった。

 最終戦のスタートは名取と角田がスタートを決めて、名取が1コーナーを制した。「明日は4番グリッドなので勝負できるはず」と語っていた佐藤がチームメイト大滝をかわして3番手にアップ。後続も3ワイドで5番手争いが展開され、名取も90度コーナーでブレーキロックするなど、オープニングラップはコース各所で攻防が見られた。

 レース中盤に向けてトップ争いは名取と角田が抜け出した格好だが、後続では佐藤と大滝が接触した隙に小高が3番手に上がるなどバトルは熾烈。そのまま小高はファステスト更新を繰り返して2番手角田に迫ってきた。

 角田も名取を追い詰めるバトルに突入していたが、「タイトル争いを意識して戦い方を切り替えました」と後に角田が語るように、小高が真後ろに張り付いてきたこともありクールダウン。三つ巴のトップ争いは各車の間隔が徐々に開く展開となった。

 9周目。混走しているインディペンデントカップのIKARI(TOEI BJRacing F110)と植田正幸(Rn-sports制動屋F110)が接触。続いて植田と仲尾恵史(TCS Racing Team)が接触。これにより、セーフティーカーが入ることになってしまった。
 結局レースはセーフティーカー先導のままチェッカーを迎えて名取が優勝。角田は2位フィニッシュで2018年FIA-F4の初タイトルを確定させた。3位には小高が入った。

 今季は7勝でタイトルを決めた角田は「本当は優勝して決めたかったのですが、とりあえず表彰台を獲得してチャンピオンになれたのは良かったです。今シーズンは開幕戦岡山から優勝できましたが、途中ノーポイントのレースもいくつかあったので、タイトル争いが最後までもつれ込んでしまいました。オートポリスからここに来るまでずっとプレッシャーを感じていて、やっと肩の荷が降りた感じです」と安堵の笑顔を見せた。

 今シーズンからスタートしたインディペンデントカップは、植田がポイントリーダーで迎えたが、第13戦はポールスタートの仲尾が優勝してシリーズ首位に浮上。植田と仲尾は僅差で第14戦を迎えることになったが、終盤のトラブルによりクラス4番手でゴールした植田とリタイアした仲尾には30秒加算の罰則が課されることになった。

 この結果、仲尾がリタイア、植田が6位という成績となり、シリーズでは植田が仲尾を逆転。植田がインディペンデント初代チャンピオンの座を獲得することになった。

 2018年シリーズの紅一点となった小山美姫(DRPF4)は、最終戦もてぎ大会を第13戦が12位、第14戦はリタイア、シリーズ成績は15位という結果で終えることになった。しかし、このレースウィークでは光る速さを見せていた。

「SRSに行ったことによって、自分がすごく伸びました。昨年は知らないサーキットをなくせて、その環境でしか学べないことを学べたので、それを今年活かせればと思っていました。ですが、”活かす”というのはしっかり成績を残すという意味だったんです。

 ですが、今年はずっと20番手あたりで争っていて、そういうドライバーにとってトップ争いは別世界でした。でも、そういう空気を味わいながら、一回勝てば、勝利への流れや感覚が掴めると思って、常にシングルで争って、トップ集団の争いを繰り返すことで自分もクルマもレベルが上がっていって、結果を伸ばせたらいいなと思っていたんです。

 今年の序盤は、クルマとチーム、環境が良かったおかげである程度上にいることができました。ちゃんとフィーリングも掴めてきて、トップ集団のペースだったりバトルの仕方だったり、そういうのを学びながら、後半戦はしっかり結果を残していきたかった。

 でも、今年はプライベートな練習を一回もできてないので、本番が練習でもありました。そうなると、応援してくださる方々の表情を思い浮かべて、行きたい気持ちもありながら、自分の実力的には行けない、といった葛藤が自分の中でありました。

 レースウィークの限られた機会で速さを磨くことはできても、それ以外のことはまだまだです。速さというのも、その速さが普通の状態になれば、それ以上を狙ったときも無茶にはならないですよね。でも、その速さが定着できてないので、少し背伸びをすると無茶になってしまう。オートポリスではその壁を破ることができなかったんです。

 オートポリスではそれで凄く悔しい思いをしたので、最終戦もてぎに来るまでに、ドライビングだけじゃなくて、今までなかった視点や観点でクルマを見るなどして、考え尽くして、自分なりに準備をしてきたんです。

 そして、もてぎを走り始めたら、気付いた方は気付いたんですが「走り方が変わったね」と指摘されたんです。自分としても、自分なりに一つ壁を破ったというか、もてぎでは、自分が作ったイメージでそのまま走ることができたんです。

 自分はいつも8番手から11番手の間にいるので、その壁を破るために考えました。それで気付いたのは、『どうして速かったのかが、分かっていなかった』ということなんです。どうして遅いのかは分かっていたので、速かったのは”たまたま”だったんです。トップドライバーは、その両方を分かっていて、それが理解できるからトップにいられるですよね。

 もてぎでは、順位は良くなかったんですが、明らかに掴んだものがありました。それはレースにも活かせるものだったので、自分としては結構落ち着いてレースに挑めました。今まで持っていたものでは、頑張っても8番手が最高で、今持っているものなら、6番手とかを狙える可能性を感じています。

 今回はプラクティスで7番手を獲ったこともあったので、最終戦は6位を狙いながらいいレースをして終わりたいなと思ってました。ですが、結局リタイアに終わってしまったので、応援してくださった皆さんには、申し訳ない思いでいっぱいです」。

ダブルポールの名取鉄平が第13戦の1コーナーを制して小倉翔太と大滝拓也が続いた。
第13戦は角田裕毅の優勝。2位は名取。暫定3位の小高一斗はペナルティで21位に。
第13戦で勝利した角田を激励する本田技研工業モータースポーツ部の山本雅史部長。
嬉しい初表彰台を逃した小倉。小高から手渡された3位のキャップに複雑な表情。
タイトル争いが決する第14戦は、名取(左)と角田によるチームメイト一騎打ち。
有利な状況ながら、出走前のパドックで独りコンセントレーションを高める角田。
2番手の角田はトップ名取を追い詰めるも、考えを切り替えてポジションを堅守。
SCランのまま終了した第14戦。優勝は名取(左)、角田は2位でタイトル確定。
第14戦表彰台の顔ぶれも表情は硬い。左から2位角田、優勝の名取、3位の小高。
第13戦インディペンデント優勝は仲尾恵史。植田正幸とのタイトル争いに挑む。
大荒れの第14戦は廣田秀機が初優勝。クラス6位の植田正幸が初代タイトルを獲得。
紅一点の小山美姫。この週末に存在感を示しながらもシリーズは15位に終わった。
Honda Sports & Eco Program FIT 10リッターチャレンジでは武石真和が優勝。
スーパーGT最終戦大会期間中にオフィシャルを対象とした消火訓練が行われた。
ページ
トップへ