万難を排した1本目 PN2山野哲也が2018タイトル確定一番乗り!!
2018年8月9日
全日本ジムカーナ選手権で前人未到の100勝を数えたPN2山野哲也が、灼熱の第7戦菅生西でもライバルを圧倒。自身18回目のタイトルを確定させた!
2018年JAF全日本ジムカーナ選手権第7戦「SUGO ALL JAPAN GYMKHANA」 開催日:2018年8月4~5日 開催地:スポーツランドSUGO西コース(宮城県村田町) 主催:SSC
残り4戦となった全日本ジムカーナ選手権。第6戦みかわまでに4勝している選手にとっては、スポーツランドSUGO西コースで行われた第7戦がタイトル確定の天王山となった。
盛夏の8月上旬開催とあって、晴天に恵まれた会場は灼熱の戦いだ。金曜の練習会から土曜の公開練習までは、強い日差しに見舞われて路面温度が上昇。タイヤの適用温度域を超える苦しいコンディションとなり、各選手が対応に追われていた。
ところが、決勝の日曜は、朝方には強い日差しが照り付けたが、やがて天気予報どおりに黒雲がコースを覆い、一時はポツリと雨が落ちる先の読めない天候に見舞われた。
今回の決勝コースは、今年から新設されているコース中央部の狭いショートカットを中間計測地点として、外周を2周するハイスピードな前半区間と、鋭角コーナーに8の字や180度ターンが連続するテクニカルな後半区間という組み合わせ。
カントが付いた西コース独特の路面でのライン取りや、傾斜地に置かれたパイロンターンはベテランでも唸る攻めどころで、勝負を大きく左右するポイントとなっていた。
スポーツランドSUGOでの全日本ジムカーナ開催は、実に2011年以来の7年ぶり。PN4は不成立だったが、94台が西コースに集結し、タイトル確定の大一番に挑んだ。
第3戦エビス西で全日本ジムカーナ100勝を挙げたPN2の山野哲也(EXEDY 05D 124)。第6戦みかわでは今季4勝目を挙げてポイントリーダーをひた走っていた。
第7戦菅生西では、山野に次いで、河本晃一(レイズHALリジットZ.05D)、松本敏(itzz☆DL☆RSK 124)、土手啓二朗(ITO☆DL☆ATIKスイフト)、工藤典史(YH wmx ITO spmシビック)の順で、5名にタイトル確定の可能性が残されていた。しかし、土手が欠場したため、残る4名によるPN2のチャンピオン争いが展開された。
第1ヒート。FD2シビックを駆る松本悟(BS ITO μ COBRAシビック)が、いきなり1分27秒038をマークして暫定トップに躍り出る。Z34を駆る志賀野浩(エナペタルBRIG Z34)がコンマ2秒差で2番手につけ、菅生西コースの地方選手権では実況アナウンサーも務める、FD2使いの工藤が2番手タイムを叩き出して割って入った。
続く松本敏は、果敢に縁石を使って最短距離を走らせる。しかし、中間地点で車両トラブルが発生してスローダウン。タイムを残せなかった。続くは、開幕戦以来勝利がない河本。精緻な走りでフィニッシュし、1分25秒768でベストタイムを更新してみせた。
そして最終走者の山野がスタート。僅かに挙動を乱しながらも車速を載せてベストラインをキープする走り。後半のターンも小さく回った山野のタイムは、何と1分24秒974。2番手の河本を約コンマ8秒上回るベストタイムをマークして暫定トップに立った。
第2ヒートは時折風が吹く曇り空。しかし、ターンセクションなどにはタイヤのラバーが貼り付いており、思うような走りをさせてくれない苦しい戦いを強いられた。
案の定、PN1ではほとんどの選手が第1ヒートのタイムを更新できず、続くPN2でも、半数以上の選手が自己タイムを更新できない状況となった。第2ヒートの1本勝負となってしまった松本敏は、善戦したものの1分27秒台止まり。河本は脱輪判定を喫して沈没してしまう。山野も自己タイムの更新を狙ったが、1分25秒台に留まった。
この結果、第1ヒートのタイムで山野が優勝。そして、2018年のPN2タイトルが確定し、山野にとって自身18回目の全日本チャンピオン確定の瞬間となった。
フィニッシュ後に驚きの表情とともにパドックでエンジニアやメカニックたちと勝利を分かち合う山野。晴れ晴れしさに満ちた表情で、山野はレース後にこう振り返った。
「今日は厳しい戦いだったね。菅生自体の勝率は高いんだけど、Z34が相手だとそうはいかなかった。金曜からタイムを比較して、土曜もフレッシュタイヤを投入して、セッティングもこれじゃないってところまで詰めた。なのに、ユーズドタイヤを履いたZ34と同じくらいのタイムだったから、正直なところ、今回は『終わったな』と思ってたんだ。
でも今回は、気温や路面温度を考えると、日曜の決勝はヒート1の勝負になると想像できた。そして土曜に発表された決勝コースも、シケインがキツくなって変形8の字が追加され、公開練習より難易度が上がって、失敗が許されないレイアウトになっていた。
そのため、イメージよりもスティフネス(剛性感)をワンランク落とすというか、リカバリー性が高い、どこでもフロントが入って、ターンは完璧にできる仕様にしたんだ。
決勝では、電子制御が介入しない走りにも徹した。攻めると瞬間的にアンダーやオーバーが出るものだけど、そうすると制御が入ってしまうので、操作量も極力減らしてね。
今回のコース後半は、シケインから変形8の字は特に失敗しやすく、その後もアツくなって失敗の上塗りをしてしまう可能性があった。でも、自分はそれを絶対しないと心に決めていていて、シケイン通過後は別の人格になるくらい気を付けてた。鈴鹿1000kmレースのファイナルラップって言えばいいかな(笑)。何が何でも完走するって感覚ね。
今回は、それがうまくいってタイムが残せたんだと思う。確実に完走できるパッケージとすべてのリスクを排した走り。それぐらいやらないと、勝てなかったレースだと思う」。
あらゆるリスクを洗い出して対策を練り、ベテランらしい冷静な走りを披露した山野。プロの気概とチーム力の高さを見せ付けられた、18回目のタイトル確定劇だった。
PN3では、ユウ(BSエボ itzz NTL 86)と川北忠(オートバックスDL BRZ)、西野洋平(BS ALEX C栃木 DP那須 86)、天満清(クスコADVANロードスター)、若林隼人(YH若林自動車ITO速心BRZ)ら5名によるタイトル争いとなっていた。
第1ヒートで1分24秒894のベストタイムをマークしたユウ(BSエボitzz NTL 86)が、第3戦エビス西以来5連勝となる今季5勝目を挙げ、2018年タイトルを確定させている。
PN1は第1ヒートのタイムで逃げ切った斉藤邦夫(ADVAN 40thロードスター)が優勝。タイトル獲得の可能性は、斉藤、福田大輔(DLレイズT2Wmロードスター)、深川敬暢(DLエナペBRIGロードスター)の順で3名に絞られた。
SA1は若林拳人(YH若林自動車速心CR-X弟)が第1ヒートのタイムで優勝。今季3勝目となり、一色健太郎(DL itzz Lt RSKシビック)、小武拓矢(シンシアYHワコーズCRX艶々)、志村雅紀(YHレイルWmDシビックKYB)の4人によるタイトル争いとなる。
SA2は、第1ヒートで1分23秒892を叩き出した佐藤巧(YH★M-ARTS★インテグラ)が優勝。第3戦エビス西以来2勝目を挙げ、高江淳(DLオイチェΩ BPFインテグラ)、朝山崇(DL BPF RSKインテグラK1)、澤平直樹(YHボレロクスコインテグラ)らのタイトル争いにシリーズ3位で割って入った。
SA3は、今季4勝している小俣洋平(DL itzzオベリスクRX7)が優勝すればタイトル確定だったが、第2ヒート出走直前に車両トラブル発生。応急処置で出走することはできたが、第6戦みかわで今季初勝利を挙げた西森顕(BSレイズペトロナスCS NSX)に2連勝を許してしまった。この結果、SA3のタイトル争いは小俣と西森の一騎打ちとなった。
SA4も、今季4勝している津川信次(DL☆itzz☆URGランサー)が優勝すればタイトル確定だった。しかし、第1ヒート、第2ヒートともにペナルティを喫してタイムを残せず、第2ヒートで1分21秒844を叩き出した菱井将文(BSレイズ・クスコランサー)が2連勝を飾った。タイトル争いの行方も、このベテラン2名の直接対決となっている。
SCでは、第1ヒートはポイントリーダー西原正樹(アクアBSリコーセインプレッサ)が暫定ベストを叩き出したが、第2ヒートで野尻隆司(itzzDLグローバルランサー)が計測したオーバーオールタイム1分21秒495を、最終走者の西原が上回れず、野尻がSC移行後2勝目を獲得した。SCのタイトル争いは西原、大橋渡(DLレカロPRSインプレッサ)、牧野タイソン(DL★PRS速心クスコランサー)、野尻の順で4名に絞られている。