”イザ”という時に備える!全日本ラリー唐津で救急訓練開催

レポート ラリー

2018年4月11日

2018年第1回JAFラリー競技における救急活動訓練

全日本ラリー第2戦・唐津のサービスパークにおいて、参加選手を対象とした、ラリー競技で万が一の事態が発生した場合の対処方法を学ぶ、救急活動の実践訓練が行われた。

「2018年第1回JAFラリー競技における救急活動訓練」
(JAF全日本ラリー選手権第2戦の大会内で開催)
開催日:2018年4月6日
開催地:松浦河畔公園駐車場(佐賀県唐津市)

 近年の全日本ラリー選手権では、毎年のシーズン始めに、大会参加者を対象とした、ラリー競技における救急活動訓練が実施されている。今年も第2戦「ツール・ド・九州 in 唐津」のスケジュールに組み込まれ、松浦河畔公園駐車場に設定されたサービスパークの一角において、ラリー前日のレッキや公式車検が終了したタイミングで開催された。

 この訓練の目的は、ラリー競技でのクルー・レスキューマーシャルのスキルアップを狙うもの。グループN仕様の競技車両を使って、FIA国際モータースポーツ競技規則付則H項やFIA INSTITUTEセミナーに基づく、負傷クルーの救出訓練が行われた。

 ラリー競技は、様々なクラッシュが避けられないモータースポーツと言える。そのため、救出活動は、負傷者の病院前救護の経験を積んだ医師を含む6名構成の救出チームで行われ、医師によって負傷者の症状確認と指示により行われるのが一般的だ。しかし、救出チームが到着するまでには、どうしてもタイムラグが生じてしまうもの。

 そこで今回は、クルーが負傷して自力で車外に脱出できず、火災などにより生命に危機が迫っているという状況を想定し、人命の安全確保を最優先するため、医師の立会を得ずに負傷者を救出するという設定における救出訓練が行われた。実施した訓練は、実際の競技車両を使った、車内の負傷者を引き出す際の身体保持方法と、車外に引き出す方法の習得。具体的には、負傷者の脇下に腕を回して、下顎を固定しながら胴体を抱え込み、負傷者の背中を救助者の胸に引き付けて車外に引き出すという内容だった。これらの訓練ではクルーが交代で救助者と負傷者役を務めた。実際にやってみると、人間はかなり重いことを実感した参加者も多かった。

 今回、講師役を務めた今大会の医師団長である紙谷孝則氏によれば「訓練では負傷者役の方が、救助者が引き出しやすいように力を入れたりするものですが、本当の緊急時には負傷者の筋肉は弛緩していることも多いため、もっと重く感じます」とのことだ。ラリー競技におけるクラッシュは、車体が必ずしも引き出しやすい状況にないことも多い。それを知っている参加者は、真剣な面持ちで訓練に挑んでいた。

 訓練の最後には、今回、特別講師として招かれた、フィンランドのASN(FIAに認められた各国のモータースポーツを統括する団体)に所属するヤッコ・マルクラ氏から、参加者を代表して福永修選手に受講証が手渡された。そして、ヤッコ氏は「初めての方も、何度も参加している方もいると思いますが、このようなエクササイズ(訓練)は、何度も同じことを繰り返して、自然と身に付いて自信を持てるようになることが大切です。固定装置を用いた実演も見てもらいましたが、これで頸部の保護がいかに重要であるかも分かってもらえたと思います。繰り返しますが、より苦痛なく安定した救出に繋がりますので、訓練を重ねることが大切なんです」と講評した。

訓練の講師は大会医師団長を務める紙谷孝則氏を始め、救急委員の原弘道氏や吉田恵助氏、川合克弥氏らが担当した。
特別講師として招かれたのは、フィンランドのASNに所属するヤッコ・マルクラ氏。訓練の模様を視察した。
全日本ラリーの公式スケジュールに組み込まれた今回の訓練。レッキが終了した時間帯に参加選手が集結した。
講師による模範訓練を見守る選手たち。日頃から意識を高めることがイザという時のスムーズな活動に繋がる。
人間の体重は意外と重い。緊急時は負傷者の意識が不明瞭な場合もあるため、その重量はもっと重く感じる。
負傷者の両腕の下方から胴体を抱え込み、頭部の動きを抑制しながら引きずり出す。身体保持は中々難しい。
そして複数の講師による模範訓練も実施。頸の保護を行う毛布や固定装置を用いた救出方法を実演した。
救急活動訓練の最後には受講証が授与された。参加者を代表して受け取ったのはJN6ドライバー福永修選手。
特別講師のヤッコ氏は翌日スタートした大会を視察。サービスパークに出展したJAFブースも表敬訪問した。
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