滑りやすい路面に翻弄された丸和で2018年全日本ダートラ開幕!

レポート ダートトライアル

2018年3月22日

僅差の戦いを制して本大会オーバーオールウィンを獲得したDクラス谷田川敏幸選手。

栃木の丸和オートランド那須で全日本ダートトライアル選手権が全9戦の先陣を切って開幕。2ヒートとも難しい路面との格闘となった決勝では、2クラスで初優勝者が誕生した。

2018年JAF全日本ダートトライアル選手権第1戦「DIRT-TRIAL in NASU」
開催日:2018年3月17~18日
開催地:丸和オートランド那須(栃木県那須塩原市)
主催:FSC、M.S.C.うめぐみ、360R

 全9戦で争われる全日本ダートトライアル選手権の開幕戦が、栃木県那須塩原市の丸和オートランド那須で行われた。今大会には選手権クラスだけで153台ものエントリーを集め、PN1には22台、N2やSA2では21台、Dでも19台の出走があり盛況ぶりを見せ付けた。

 PN2では話題のZC33Sスイフトスポーツが複数台投入され、昨年のPN1チャンピオン・宝田ケンシロー選手(YH KYB abオクヤマスイフト)や昨年のN1チャンプ・細木智矢選手(MJT DL SPM WMスイフト)らが今季は新型スイフトをチョイス。また、86使いの河石潤選手(モンスタースポーツDLスイフト)が40周年のモンスタースポーツカラーを纏った新型スイフトに乗り換えるなど、全日本ジムカーナと同様にニューカマーが大挙した。

 大会期間中は晴天に恵まれ、陽射しもあったため路面温度は上昇した。しかし、雪解け間もない丸和の路面には思わぬ箇所に水が湧き、砂埃防止の散水の影響もあって、特にコース前半部分では滑りやすい路面での戦いとなった。決勝コースレイアウトは、いわゆる"丸和Aコース”の逆走が採用され、名物となっていた丸和の”富士山”をかすめる高速ストレートも使われなかったため、中高速コーナーが連続するレイアウトでの戦いとなった。

 決勝では、第1ヒートのタイムを大幅に更新する選手が続出したため、各クラスで”2本目勝負”となった。しかし、路面状況の好転が遅くなったことからタイヤチョイスは困難を極め、超硬質ドライタイヤではない選択が第2ヒートの雌雄を決めるクラスもあった。

 PN1は、昨年のSA1チャンピオン工藤清美選手(工藤ホンダDLワコーズフィット)が3型フィットで殴り込みを掛けてきた。昨年シリーズ上位の上野倫広選手(DL田中自LubBRGスイフト)や児島泰選手(ALEX DL FTヤマトCR-Z)らは第1ヒートこそトップツーを形成したが、第2ヒートでは失速。代わりに、クラス前半で出走した若林賢太郎選手(YH-BRIG-K'sスイフト)や昨年の開幕戦覇者・鈴木義則選手(YHファジーハート☆スイフト)らが1分48秒台でトップツーを維持。工藤選手は同秒台に入れてきたものの3番手止まり。続くシード勢も下位に沈んだだめ、全日本初参戦の若林選手が、いきなり全日本初優勝を飾った。

 PN2では、第1ヒートで細木智矢選手、宝田ケンシロー選手、河石潤選手というZC33Sスイフト勢が上位を独占して新型のポテンシャルの高さを見せ付け、第2ヒートでも自己タイムを大きく上げた3名のスイフト使いが上位を占めた。しかし、ダンロップのニュータイヤを装着した最終走者の川島秀樹選手(DLネッツSPORTヴィッツT)が鬼神の走りで逆転。スイフト勢を約コンマ2秒逆転し、車両トラブルに泣いた昨年の丸和の雪辱を果たした。

 N1は、SA1へ移行した選手もいたことから合計10台の争いとなった。関東のパルサー使い・北原栄一選手(YHナスカrocoパルサー)が第1ヒートで速さを見せたが、昨年は悔しいシリーズ2位となった若手期待の岡翔太選手(フォルテックDL杉尾インテグラ)が気を吐き、北原選手を約コンマ15秒逆転して開幕戦優勝。2016年チャンピオンの威厳を見せた。

 N2では、昨年のチャンピオン・黒木陽介選手(MJTガルフ五DLランサー)がSA2に移行したこともあり、北海道のベテラン北條倫史選手(DL itzz NUTECランサー)に注目が集まった。ところが、第1ヒートでトップに立ったのはランサー・エボⅦを駆る関東の宮地雅弘選手(IRS YH FTボーエムランサー)だった。しかし、第2ヒートではシードドライバーの九州男児・岸山信之選手(itzz☆DLルーカスランサー)が暫定ベストを1秒引き上げる好走を披露。続くシード勢は、北條選手も含めて失速してしまい、ダンロップのニュータイヤをいち早く使いこなした岸山選手が嬉しい全日本初優勝を獲得した。

 工藤清美選手がPN1に移行したSA1は、丸和を得意とする稲葉幸嗣選手(メープルFORT DLインテグラ)と小山健一選手(ADLベリティーMSシビック)という地元関東勢の戦いとなった。第1ヒートはコンマ差で稲葉選手が制したが、第2ヒートでは小山選手がN2のタイムに迫るベストタイムをマーク。後続の稲葉選手は約コンマ5秒届かなかったため、小山選手が逃げ切り、昨年の最終戦タカタに続く全日本連勝となった。

 SA2は、ダンロップのニュータイヤを装着した鎌田卓麻選手(itzzオクヤマDL栗原WRX)の独壇場となった。第1ヒートは北村和浩選手(DLランサーHKサービスMJT)や荒井信介選手(CUSCO YH itzzランサー)、黒木陽介選手らが1分44秒台で戦う中で、鎌田選手は驚愕の1分42秒台のベストをマーク。第2ヒートでも、シード勢による1分40秒台の戦いを、最終走者の鎌田選手は1分39秒831というDクラスに迫るベストタイムで逆転。全日本ラリー開幕戦嬬恋で優勝した勢いそのままに、全日本ダートラ開幕戦丸和をも制してみせた。

 SC1は9台の参戦。第1ヒートは佐藤秀昭選手(KIT・YHくす子インプレッサ)が、昨年のチャンピオン山崎迅人選手(YHゲンシンMAXミラージュ)を1秒以上引き離すベストタイムでトップに立つ。第2ヒートは奥村直樹選手(Kone YHセリカ+1)が1分46秒台でトップに立つも、佐藤選手は何と1分43秒282というスーパーベストで大逆転。山崎選手も1分46秒台に留まったことから、佐藤選手が昨年に続いて開幕戦丸和を制した。

 SC2では、昨年のチャンピオン・梶岡悟選手が車両製作のため欠場。第1ヒートは田口勝彦選手(HKS・YH・テインランサー)が磯貝雄一選手(MJT ZEALランサーⅩ)を抑えてトップに立った。第2ヒートは各車大幅にタイムを更新して、特にアドバン勢が1分41秒台の戦いを展開した。中でも、昨年の第6戦門前でクラッシュした小関高幸選手(TEIN・YH・KIT・WRX)が気を吐き1分41秒422のベストで暫定トップに立った。ところが、最終走者・田口選手は小関選手を約コンマ5秒逆転。田口選手が2016年以来の開幕戦丸和での優勝を獲得した。

 SCからの移行も目立ったDクラスでは、復活した関東のベテラン・入澤勇選手(YHガレージ入澤オメガランサー)が3番手タイムをマークしたが、昨年来勢いを見せる亀田幸弘選手(YH栗原オート企画インプレッサ)が2番手、そして今季もアドバンカラーをまとう谷田川敏幸選手(ADVANトラストクスコWRX)が1分40秒664でトップタイムをマークした。第2ヒートでは1分40秒台の戦いとなり、今季からランサー・エボⅩに乗り換えた関東の下屋敷勝弘選手(大翔・堀部SPランサー)が1分39秒971で暫定トップに立った。今季からエボⅩでDに移行した平塚忠博選手(スマッシュダンロップランサー)が1分40秒083で2番手に付けて、シード勢の出走を待ったが平塚選手のタイムには届かない状況。最終走者の谷田川選手は2コーナーからインを極限まで攻める激走を披露して1分39秒279で逆転。今大会最速となるオーバーオール優勝を決めて、アドバン40周年の開幕に華を添えた。

昨年の覇者・鈴木義則選手とのバトルを制した、26歳のPN1若林賢太郎選手が全日本初優勝。
新型スイフトスポーツが台頭するPN2では、川島秀樹選手がベテランの意地で逆転勝利。
第1ヒートでは遅れたN1岡翔太選手(右)が逆転優勝。支援する杉尾泰之選手も納得の笑顔。
N2でジワジワと順位を上げてきた岸山信之選手がついに全日本初勝利。1秒差の圧勝だ。
丸和を得意とするSA1小山健一選手(右)が、稲葉幸嗣選手のインテグラを振り切って優勝。
勢いに乗る鎌田卓麻選手が全日本ラリーに続き全日本ダートラSA2でも開幕戦を制した。
FFインプレッサを駆る福島のベテラン佐藤秀昭選手が圧倒的なタイム差でSC1を制圧。
SC2田口勝彦選手(左)がコンマ5秒差で優勝。40周年のアドバン勢が上位を独占した。
ストップ&ゴーが少ない”Aコース”逆走レイアウト。高い車速を維持する走りが要求された。

フォト/滝井宏之、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

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