JAFモータースポーツ中央審査委員会裁定

公示 その他 その他

公示No.2019-WEB029
2019年8月6日

「2019 TOYOTA GAZOO Racing Netz Cup Vitz Race関東シリーズ第1戦」においてチームIMSCから提出された控訴に対してJAFモータースポーツ審査委員会が下した裁定を不服として同チームから提出された再控訴について、JAFモータースポーツ中央審査委員会は以下の通り裁定しましたので、その裁定書全文を公示します。

 

 

2019年6月27日

裁定書

 

控訴人 チームIMSC

代表 峯 浩一 殿

 

一般社団法人日本自動車連盟(JAF)

モータースポーツ中央審査委員会

委員長 金澤昭雄

委員 遠藤哲嗣

 同  小口泰平

 同  佐野彰一

 同  増田智幸

 

当委員会は、控訴人が当連盟モータースポーツ審査委員会(以下「当連盟審査委員会」という。)の2019年5月17日付け裁定(以下「原裁定」という。)を不服としてなした控訴(以下「本件控訴」という。)に対し、控訴人代表者を審問のうえ、以下のとおり裁定する。

 

主文

 

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴料は返還しない。

 

理由

第1 本件控訴の経緯

控訴人は、当連盟公認の自動車競技会である「TOYOTA GAZOO Racing Netz Cup Vitz Race 2019」(以下「本大会」という。)の「関東シリーズ第1戦」(2019年4月20日及び同月21日開催。開催サーキット 富士スピードウェイ。以下「本レース」という。)の競技参加者(エントラント)である。控訴人は、同月20日の本レース予選前、控訴人が本レースに使用する車両(108号車。以下「本件車両」という。)について、本大会競技規定に定められた公式車両検査(以下「本件車両検査」という。)を受けたところ、本件車両の装着タイヤ4本(以下「本件タイヤ」という。)について、本大会車両規定第11条第6項により禁止された加工がなされたものとして使用を認めない旨の判定(以下「本件不合格判定」という。)を受けた。そこで、控訴人はこれを不服として、本大会審査委員会に対する抗議を経て、当連盟審査委員会に対する控訴(以下「原控訴」という。)をなしたものの、棄却する旨の原裁定がなされたため、これを不服として本件控訴がなされたものである。

 

第2 本件控訴の趣旨及び理由

本件控訴の趣旨及び理由は、本件控訴理由書に記載のとおりであるが、控訴人代表者の審問の結果、これらを整理すると、以下の3点の理由により、本件不合格判定は取り消されるべきであるというものである。

① 本件タイヤは加工されたものではないから、本件不合格判定は不当であり、これにより出走機会を奪われたのは不合理である。

② 本件不合格判定の際、本大会技術委員長から控訴人代表者に対し、不合格判定の理由及びその根拠について直接の説明がなかったのは不当である。

③ 本件不合格判定の理由及び根拠を知るため、大会事務局に対し、担当技術委員の氏名の開示を求めたところ、控訴人が不服申立てをしていることを理由にこれを拒絶したのは不当である。

 

第3 当委員会の判断

1 本件不合格判定の不当性について(本件控訴の趣旨及び理由①)

(1)本大会車両規定について

本大会車両規定第11条第6項は、通常走行時の摩耗以外のタイヤの加工(削り等)を禁止し、当該大会技術委員長により加工していると判断されるものは使用を認められない旨を規定しており、禁止されたタイヤであるか否かの判断を当該大会技術委員長による車両検査時の専権事項としている。そして、同規定第15条は、本大会車両規定は、「出来る限り加工・変更等の改造の範囲を最小限に留めた車両で、平等な条件の下に一人でも多くの人が参加できることを目的」として作成されたものである旨の解釈基準を示したうえで、本大会車両規定の解釈に万一疑義が生じた場合の最終判断権を当該大会技術委員長に委ねている。このように定められた趣旨は、本大会がアマチュア競技参加者によるワンメイクレースであって、車両と条件の同一性・平等性がその開催意義を決定づける要素であることを前提として参加者を募り、参加者及び運営面での経済的、時間的、その他の諸負担を調整し、もって大会の維持発展を図るため、車両規則に関する判断権を当該大会技術委員長に委ねたものであり、特にレースの帰趨を左右しかねないタイヤの状態に関する判断に関しては、レース運営上の支障を可能な限り回避すべく当該大会技術委員長の専権と特に明示したものであって、参加者はこれを前提として参加している。したがって、大会技術委員長のなした権限行使の当否を審査するにあたっては、本大会車両規定上、大会技術委員長にそのような権限が与えられた上記の趣旨に鑑み、その権限行使に逸脱が認められない限りは、大会技術委員長の判断を正当として是認すべきものである。

(2)本件不合格判定について

そこで本件不合格判定についてみてみるに、本件不合格判定は、本件車両検査の際、本大会技術委員長が本件タイヤに薄い縦筋(以下「本件縦筋」という。)の存在を認めて、本件タイヤについて、通常走行時の摩耗以外のタイヤの加工(削り等)がなされたものであると判断して、本大会車両規則第11条6項違反と判定したものである。本件縦筋の存在は、本件車両検査の際、本大会の主管団体の担当者もその状態を確認している。これを前提とすると、これをもって本件タイヤの使用を認めなかった本大会技術委員長の判断に権限逸脱は認められず、正当として是認できる。

なお付言するに、以上の判断は、原裁定と、基本的な考え方及び結論において同じである。

(3)控訴人の主張について

なお、控訴人は、本件縦筋の発生原因として、タイヤ掃除の際に発生した可能性を指摘する。しかしながら、「掃除」の範疇とされる行為であれば加工とは判断されないということを意味しないのであるから、控訴人の主張は失当である。

また、控訴人は、他のレースにおける車両検査では同様の状態のタイヤが合格していると指摘するが、別のタイヤについてなされた別レースの判定結果をもって本件判定の当不当を論じるのは失当である。

なお、さらに付言するに、控訴人は、本件不合格判定が控訴人の出走機会を奪うものであった旨主張するが、本件不合格判定は、車両規定違反であっても、本大会競技規定第9条第2項の罰則を適用することなく、代替タイヤでの出走を認めるものであり、控訴人に対しても上記車両規定第15条の精神に則り出走機会を最大限認めたものであるので、控訴人の主張はこの点からも失当である。

 

2 本件不合格判定の通知について(本件控訴の趣旨及び理由②)

本件不合格判定は、車両検査の際、チーム構成員4名(代表者、ドライバー、メカニック2名)のうち、メカニックの1名に対し、「4本のタイヤに縦筋があること」が不合格判定の理由である旨通知され、同メカニックから控訴人代表者に電話でその旨の連絡がなされたうえで、控訴人代表者による抗議に至るという経過をたどっており、審問の際に控訴人代表者もその旨確認している。

そもそも車両検査の不合格判定の参加者に対する通知、説明に関しては、大会技術委員長からエントラント代表者に対し、その理由について直接の説明がなされなければならないとする規定は存在せず、適宜の方法にて参加者に通知されれば足りるものと解される。また、本件においては、その経過からして、控訴人代表者に対して大会技術委員長から直接に説明がなされなければならなかったことをうかがわせる特段の事情も存在しない。

以上により、本件車両検査の不合格判定の通知において、控訴人が主張するような不当性を認めることができない。

 

3 技術委員の氏名の開示について(本件控訴の趣旨及び理由③)

そもそも、車両検査の担当技術委員の氏名の開示を求める権利は参加者に認められていないので、控訴人の主張は失当である。

 

4 その他の控訴人の主張は、いずれも控訴人代表者の個人的な見解を披歴するにとどまるものであり、本裁定の結果に影響を及ぼすべきものとは認められない。

 

第4 以上により、本件控訴の趣旨及び理由は、いずれも認めることができないので、主文のとおり裁定する。

なお、控訴人は、本大会に10年を超える参加歴を有し、本大会の維持発展に対する功績は軽んじることはできないし、控訴人代表者の有する知見や意見にはアマチュア自動車競技大会の運営において十分傾聴に値するものも含まれている。しかしながら当委員会は、それらの点については本審査において考慮することは出来なかった事を付言する。

    ページ
    トップへ