モータースポーツ審査委員会裁定

公示 その他 その他

公示No.2017-WEB004
2017年5月10日

JAFモータースポーツ審査委員会は、2017年全日本ラリー選手権第1戦(235日、群馬県内)において出された控訴を審査し裁定しましたので、その裁定書を公示します。

 

 

 

JAFMS2017-096

 

2017年4月14日

 

裁 定 書

 

 

 

控訴人ADVANPIAA  Rally  Team

代表 奴田原文雄 殿

 

 

 

一般社団法人日本自動車連盟

 

モータースポーツ審査委員会

 

 

 

主 文

 

 

 

本件控訴を棄却する。

 

控訴料は没収するが、本件審理に要した経費については控訴人に負担させない。

 

 

 

理 由

 

1 事案の概要

 

控訴人代表奴田原文雄氏(以下、「奴田原氏」という。)は、2017年2月3~5日、群馬県において開催されたJAF全日本ラリー選手権第1戦「Rally of Tsumagoi」(以下、「本件ラリー」という。)に競技運転者(ゼッケン21)として参加し、競技結果(暫定)3位であったが、競技結果(暫定)1位であった勝田範彦氏(以下、「勝田氏」という。)運転の競技車両(ゼッケン20)の使用タイヤ(以下、「本件タイヤ」という。)が、本競技会特別規則書(以下、「特別規則」という。)17.1に規定された「使用タイヤは日本国内で市販されている一般用スタッドレスタイヤに限り使用可能とする。」との規則に違反したものであるとして競技会審査委員会に抗議したところ、勝田氏から本件タイヤの販売証明書、本件タイヤの製造者が運営するウェッブ上のタイヤカタログに海外向けに販売されていることを示す資料が提出されたことから、競技会審査委員会はこの抗議を却下した。これに対し、控訴人から本件控訴がなされた。

 

控訴の理由は、特別規則17.1の「日本国内で市販されている一般用スタッドレスタイヤ」は、店舗で誰が行っても購入できるタイヤでなければならないとしたうえで、本件タイヤは、メーカーが日本では販売していないとしており、日本国内に逆輸入されているとしても、一般には公開されておらず、「日本国内で市販されている一般用スタッドレスタイヤ」とは言えないというものである。

 

 

2 当審査委員会の審議及び判断

 

(1)  本件タイヤは、海外向けではあるが、日本国内においてもある業者が逆輸入、販売しているとのことであり、これを明確に否定することもできない。

 

(2) 特別規則17.1の「日本国内で市販されている一般用スタッドレスタイヤ」の意味について検討すると、控訴人の主張は、日本国内の店舗で何人も購入できることを要すると解釈することが、 国内Bライセンス保持者に参加資格を認め、間口を広げて競技人口を増やそうとしている日本国内のラリー選手権の在り方に沿うというものであり、傾聴に値する。

 

一方、今日のインターネット社会において、実際に日本国内に店舗がなくても、商品を購入することは可能であり、インターネットでしか購入できない商品であるとしても、市販という用語に含めて解釈することは可能である。また、控訴人は、本件タイヤの情報が一般には知られていないことを指摘するが、インターネット等により種々の情報を集め、最適のタイヤを選ぼうとする行為を許さないとすることが妥当かは疑問の残るところである。

 

したがって、本件タイヤが、特別規則17.1の「日本国内で市販されている一般用スタッドレスタイヤ」に当たらないと断定することはできない。

 

ところで、特別規則17.1は、「使用タイヤは日本国内で市販されている一般用スタッドレスタイヤに限り使用可能とする。」としたうえ、モータースポーツ用タイヤの4銘柄及びそれらに類似するスタッドレスタイヤの使用を禁止し、さらに「使用タイヤに疑問がある場合には、事前に競技会主催者に確認し、許可を受けて使用すること」と規定している。これは、本大会の特別規則において、「日本国内で市販されている一般用スタッドレスタイヤ」か否か、4銘柄に類似する禁止タイヤか否かが明確でない場合には、その使用について競技会主催者へ使用可否の判断を委ねたものと理解できる。そして、勝田氏は、本件ラリー開始前の2017年1月30日、使用タイヤの追加として本件タイヤを申請しているが、競技会主催者は、特段の回答をすることなく、勝田氏の本件タイヤについて、本件タイヤの使用の前に本件ラリーでの使用を前提としたマーキングを施していることからすれば、競技会主催者は、本件タイヤ使用に関し、黙示の許可を与えていたとみざるをえない。

 

以上の検討結果を総合すれば、本件タイヤについて特別規則17.1違反として、勝田氏を失格処分とすることはできないというべきであるから、本件控訴を棄却し、控訴料は没収するが、審理に要した経費は、前記事情に鑑み控訴人に負担させないこととする。

 

よって、主文の通り裁定する。

 

なお、控訴人の前記控訴理由は、現在の日本ラリー選手権の在り方に思いを致した傾聴すべき見解であり、規則における「市販」等の表現の明確化、競技会主催者による使用タイヤの事前確認の在り方等について、ラリー部会等において検討されることを望むものである。

 

以上

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